千年を生きてきた人

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その人に再び出会ったのは、毎日同じような日を繰り返していた三ヶ月後のこと。 帰宅ラッシュの駅で、階段を登っていた時だった。 「透子……!」 名前を呼ばれたと思った瞬間、私は宙に浮いていた。そして、強い衝撃。 階段を踏み外したお爺さんが落ちて来て、それに巻き込まれて落ちる瞬間、誰かが私を抱きかかえてくれていた。 「大丈夫か?」 私を腕の中に抱えて守ってくれたその人は、階段の下で心配そうに問いかけてくれた。私は幸い膝小僧を擦りむくだけで済んだが、問いかけてくれたその人は、頭に怪我をして血を流していた。 「あなたこそ、大丈夫ですか!?」 そう言いながら覗き込んだとき、以前人ごみの中にいたその人だと気がついた。 怪我人は他にもいて、辺りは騒然となっていた。けれどもその人は、焦ったように立ち上がると、フラつきながら逃げるようにその場を立ち去った。 その日から私は、通勤途中で毎日その人を探すようになった。助けてもらったお礼を、まだきちんと言っていなかった。 ……すると、その人とは案外簡単に出会うことができた。 数日後、あの日と同じように、人の波の向こう側から、ジッと私を見つめている視線に気がついた。 私が必死に駆け寄ると、その人は私を見つめたままそこに留まり、まるで私を待っていてくれるようだった。
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