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まだ幼い山犬の子ウォセが物心付いた時には、この奇妙な共同生活はもう始まっていた。
人間が鉄砲を手にしてからというもの、獣達の棲家はどんどん森の奥へ奥へと追いやられていった。自分が強者だと信じて疑わなかったヒグマや狼など狩る側の獣達も例外ではない。
狩人に狙われ、庭のように自由に駆け回っていた狩場も今ではおちおちとは歩けなかった。例え今日は餌にありつけたとしても明日喰える保証はない。
そんな時の為に、お前を喰わせ太らせておくのだとウォセはエタラカから聞いていた。そして、エタラカはこうも付け加えた。
「お前の母親を殺して喰ったのも俺様だ。悔しいか? 悲しいか? だったら仇を討って見せろ! いつでも相手してやる。お前に殺られる俺様じゃあないがな」
ウォセにとっても、母を亡くし幼い自分が一匹だけで生き抜ける程、この森が甘くない事はわかっていた。彼の野生が言っている、今を生きる為にエタラカを利用するのだ。
辛く意に沿わない状況も今は我慢しろと自らに言い聞かせる。弱い自分を鍛え追い込み、自らが喰われてしまう前に母の仇を討つのだ……エタラカを殺すのだ……と。
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