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小さな二匹は、恐怖でとてもその場を動けない。例え動けたとしても、その瞬間たちまち巨大な爪で体を引き裂かれてしまうだろう。
「フン!わざわざ匂いのする方へ来てみりゃあ、こんなガキどもしかいねぇじゃねえかクソったれが。まぁいい、今日は朝から何も喰ってねえんだ」
「お、おいアムルイ! 俺達なんか食べても、ちっとも腹なんか、ふ、膨れないぞ!」
「そ、そうだぞ! ほらピリカなんか殆ど骨と皮じゃんか。喰うなら、オ、オイラから喰ったらどうだ」
「う、うるさい! ウォセだって何だよその足……筋張ってて、スッゲーまずいに決まってるよ。だったら、俺から喰え!」
「グウォフー!! ギャーギャー喚くんじゃねえ!!心配しなくても、いっぺんに喰ってやるから安心しなガキども!」
アムルイはそう言うと、突然その場に立ち上がり二匹に掴みかかった。
『ワーーー! 離せーーーー!!』
「グウォーーー!」
丸太のように巨大な腕がウォセの視界を塞いだ瞬間、風を劈き何処からともなく灰色の塊がアムルイの首筋目掛けて飛びついた。
たまらず二匹を投げ捨てるアムルイ、今度は自らに喰らいついたソレを引き剥がしにかかる。
だが、灰色の塊は既の所で顎を緩め、巨熊の肩口を土台に見事な跳躍を見せた。着地した場所には……ウォセとピリカ。
そこには、二匹を守るように体制を整えアムルイを睨みつける、エタラカの姿があった……。
〈中編へ続く〉
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