第2章 地区予選

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そうして迎えた決勝戦。 お互いに県大会出場を決めている2校だが、準決勝と同じスターティングメンバーで、温存など考えていない。 総合的にレベルが高く、智也という絶対的なストライカーが現れた荒木中学サッカー部と、相模や菅野といった強力な守備陣を擁する兼久中学サッカー部の試合は、いかに荒木中学サッカー部が兼久中学サッカー部の守備を破るのか。 もしくは耐え切った兼久中学サッカー部が守り勝つのか。 どちらにせよ、そんなに得点の入る試合ではないと思われていた。 しかし、この試合は予想を大きく超えた展開となり、1人の選手の名前が大きく広まるきっかけとなった。 「9番を止めろ!」 「前を向かせるな!」 試合はあっという間に進んでいき、智也がボールを持った瞬間にそんな声があがる。 智也はこの試合で既に3点をスコアに刻んでいた。 「相模さん!行きましたよ」 (これ以上離されるわけにはいかない) ボールを持った智也は、あっという間に1人、2人と兼久中学サッカー部の選手を抜いていき、センターバックの相模へと向かって突き進んできた。 必死に止めようと対峙する相模だが、智也は重戦車のように強靭で、そのドリブルを止めることは叶わない。 それでもなんとか抜かれないように並走し、隙を窺うのだが、体を当てられても智也はビクともしない。 それどころか相模がバランスを崩して置いてかれそうになるのだ。 (くそ、バケモンかよ) 心の中で悪態を吐く相模だが、智也はそんな相模を気にせずに飛び出してきた菅野の横にミサイルのような強烈なシュートを放つ。 菅野もそのシュートになんとか反応し、必死に手を伸ばすが一足遅く、わずかに届かない。
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