第2章 地区予選

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そのまま試合は進んでいき、最終スコア5対0で荒木中学サッカー部の優勝が決まった。 大会当初の予想では、やはり地区1位を取り続けている荒木中学サッカー部の優勝が最有力であったが、今大会2位の兼久中学、そして3位の朝陽中学との差は少なく、その日のコンディションなど些細なことで逆転も可能だと評されていた。 しかし大会を終えてみると荒木中学の優勝は予想通りなのだが、その内容は予想に反して圧倒的だ。 朝陽中学、兼久中学という3強の2校との試合も含め、全ての試合で無失点と5点以上差をつけるというワンサイドゲームは誰にも予想できなかった。 離島の集まりであるこの地区大会では、智也という世代トップクラスの選手のことすら知らない人がほとんどだ。 ナショナルトレセンやエリートプログラムといった選抜に選出されている選手ということを協会や、指導者は知っていたが選手達にはあまり知名度はない。 だが、この大会を通じて断トツの得点王に輝いた智也の存在は、確かにこの地区で広く知れ渡ることになる。 「鎌倉智也か……あれが全国レベルなのか?遠いな……」 試合に敗れた兼久中学サッカー部の相模は、試合後に監督から智也が全国レベルの選手だと聞き、その力の差に思わずそう呟いた。 その言葉に反論はなく、それだけ智也の活躍は本土からかけ離れた離島の公立中学サッカー部の選手達には衝撃的だったのだ。 (いろいろ誤算はあったけど、とりあえず地区大会は制した。次は県大会か……どんなチームや選手がいるのかな) その智也は、早くも次のステージである県大会に向けて思いを馳せていた。 こうして智也にとって最初で最後の中学サッカー部としての地区大会が終わった。
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