第1章 天才というか怪物

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智也にとって荒木中学サッカー部員としての初試合は、地元の社会人チームだ。 社会人チームと言っても、年齢もバラバラで趣味でサッカーをしているような草サッカーチームである。 (ツートップのフォワードでスタメンかー、社会人相手って初めてだけどどんなもんなのかな?) 安藤から事前に発表されたスターティングメンバーの中に智也の名前は入っていた。 一年生で唯一スタメンに選ばれたことから期待されていることがうかがえる。 そんな智也は、試合前のアップをしながら対戦する社会人チームの選手達の練習を見ていた。 (やっぱ大人だしみんな体でかいな。パワーだと分が悪いかな?) パッと見て目に付いたのは、チームメイト達に比べて明らかに大きい体だ。 身長的には同じくらいの選手もたくさんいるが、やはり中学生の細い体と大人の出来上がった体だと厚みが違う。 そんな風に観察していると、あっという間に試合開始の時間を迎える。 (うーん、技術的には負けてないかな?でもやっぱりフィジカル負けしちゃうよなー) 荒木中学サッカー部のキックオフで始まった試合は、中盤のパス回しからゆったりとした立ち上がりで始まった。 前線で待機している智也は、積極的に体をぶつけられて体勢を崩しながらもなんとかパス回しを続けているチームメイトを見ながらそんなことを思っていた。 「智也、任せた」 (この位置だとちょっと突破は難しいかな?でも中学サッカー初プレイだし景気良くいってみよっか) そして智也のこの試合初プレイと言えるシーンは思ったより早く訪れた。 前半3分を過ぎた辺りだろうか、序盤から積極的なプレスを仕掛けられ少し危なっかしいプレイが続けていた荒木中学サッカー部だったが、一度右サイドにボールをふりそして前線で待機していた智也の足元にパスが通る。 センターサークルを少し越えた辺りでボールをトラップした智也は、トラップのさいの反転で1人かわし首をふりながら周囲の状況を確認する。 智也より前にいる相手プレイヤーは、キーパーを入れて5人だ。 スリーバックと、ボランチの選手である。 まだまだゴールまでの距離も遠いし厳しいかなっと思案する智也だが、ドリブル突破を決断するのは早かった。 「お、こいつ早いぞ」 一歩二歩と急激に加速した智也は後ろからチェックにきた中盤の選手を振り切り、そのままボランチの選手と対峙する。
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