出会い

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 裕太は最近、家族と共にこの村に引っ越して来た。  ある日、村の学校にて他の子供たちと言い合いになったのだ。テレビの心霊番組なんか嘘ばかりだ、と主張する裕太。  一方、番組は本当だ、と主張する村の子供たち。  両者は、自分の意見を曲げることなく言い合い……挙げ句、裕太は村の子供たちとこんな勝負をすることになった。村の外れに、幽霊が出るという噂の古い別荘がある。夜中にそこの地下室に行き一晩過ごせたなら、お前の勝ちだ。しかし途中で逃げ帰ったなら、お前の敗けだ。 「そんな下らないことのために、ここに来たのかニャ。全く、お前ら人間は本当にアホだニャ」  裕太の話を聞き終えた黒猫は、耳の裏を後足で掻きながら、呆れたような口調で言う。一方、裕太はおずおずと口を開く。 「凄いなあ、お前。猫なのに喋れるの――」 「お前とは何だニャ! あたしは偉い化け猫様だニャ!」  言うと同時に、黒猫は尻尾で地面を叩いた。ビシャリ、という音が響き渡る。裕太は怯えた表情で頭を下げた。 「ご、ごめんなさい」 「全く、人間の小僧は礼儀を知らないニャ。あたしは二百年も生きてる化け猫ミーコ様だニャ。敬意を持つのが当然だニャ」 「へえ、ミーコって名前なんだ」  そう言って、裕太はクスリと笑った。すると、ミーコが睨む。 「何がおかしいニャ?」 「いや、ミーコって普通の飼い猫みたいな名前だから……化け猫らしくないし――」  そこまで言って、裕太は慌てて口をつぐむ。すると、ミーコは呆れたように首を振った。 「近頃の小僧は、本当に礼儀を知らないニャ。呆れたもんだニャ。三百年も生きてきた化け猫様に対する敬意を知らないのかニャ」  そう言って、毛繕いを始めるミーコ。さっきは二百年生きたって言ってたよな、などと思いながら、裕太はそっと近づいてみた。 「ねえミーコ様、さっきの影みたいなのは何だったの?」 「妖怪ぶるぶるだニャ」 「ぶるぶる?」 「そうだニャ。人間を怖がらせるのが大好きな妖怪だニャ。まあ、あたしから見れば雑魚妖怪だけどニャ」  そう言って、勝ち誇ったような表情になるミーコ。その様子はとても可愛らしく、裕太は思わず手を伸ばしミーコの背中を撫でていた。すると、ミーコはジロリと睨む。 「小僧、気安く触るニャ。あたしは四百年も生きてる化け猫様だニャ」
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