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オギャー、オギャー、オギャー、オギャー。
声が病室に響く。
「おめでとうございます!元気な女の子の双子ですよ!」
助産婦が嬉しそうに母親に報告する。母親は安堵の表情を浮かべ、目から涙をこぼした。
「良くやった。よく頑張った。」
その場にいた夫も涙を流しながら、母親の手を握った。
「どうぞ、右がお姉ちゃんで左が妹さんですよ。」
優しく赤子を母親の横に寝かしつける助産婦。母親は壊れ物に触れるように優しく双子の頭を撫でる。
「伊織、貴方がお姉ちゃんよ。妹を絶対見つけてね。」
「詩織、ごめんね。もうお別れだけど、私達は貴方のこと絶対忘れない。一緒に育てられなくて本当にごめんなさい。」
母親が妹、詩織に別れを告げる。父親も今度は悔しそうに顔を歪め、歯を食いしばりながら助産婦に目で合図した。
助産婦は妹だけ優しく抱き抱えると、別室に連れて行った。
「ごめんなさい、ごめんなさい。詩織。」
母親はずっと泣き続けている。父親は母親の手を握りながら詩織が出て行った扉を見つめていた。
これは、それから16年後のお話。
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