0人が本棚に入れています
本棚に追加
「進路どうする。
お前だけ、どうしたいか全く希望用紙に書いてなかったぞ。」
「すみません。まだ、分かりません。」
先生の話は、進路の話だった。
怒られなくて良かったとは思ったが、これはこれで避けたい話だ。
僕は進路希望用紙に書くことがなく空白のまま提出していたのだ。
「千城、あまり言いたくはないが、お前の両親はやりたいことをしてほしいと言ってくださってるんだから、やりたいことをやればいいんだ。やりたいことがあっても叶わないやつだっているんだから。」
やりたい事がわからないから、記入してないんじゃないか。
僕はまだ先生の言葉を軽く見ていた。
僕は小さめに返事をし、退室した。
放課後、海は携帯のことで反省文を書かされるらしく、先に帰ることにした。
僕は帰り道小腹が空いていたため、バーガーショップに寄ることにした。
いつも6時を廻ってから家に帰るため、6時閉店のこの店に寄るのは久しぶりである。このハンバーガーのソースの香りとポテトの香りも久しぶりだ。
「テリヤキバーガーとレモンスカッシュですね。どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
同じ年頃の女の子が笑顔で僕にハンバーガーとジュースを渡す。僕はそれに会釈をして顔を上げると、彼女の表情が変わった。
「あれ?」
「え?」
「あ!もしかして、雪?」
「そ、そうですけど、あなたは…」
彼女は僕に見覚えがあるらしい表情をした。
たしかに僕も見覚えがある。
海のおすすめ動画撮ってる時、通りすがった人だ。
昔会ったことあるような人だが思い出せない。記憶の隅から目を覚ましそうだがそのままレム睡眠を続けているようだ。
「私だよ、木咲桜! 昔、よく一緒に遊んだ!?」
「…あ、はぁ。」
彼女は目を大きく開きアピールする。
僕は何も思い出してはいないがとりあえず、思い出したふりをしたその場をしのぐ。
「もうすぐ終わるから待ってて。」
「はい…」
うまく彼女の言葉に乗せられたが、思い出さなければ話が通じない。
僕は考えながら、バーガーを口する。
レモンスカッシュの泡がプツプツと出ては消える。
しばらくすると、こちらに近づく足音が聞こえその方向を見ると制服姿の彼女が駆け寄ってきていた。
最初のコメントを投稿しよう!