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外は涼しく気持ちが良かったがあいにく走っているため、えらいという気持ちが勝つ。
僕は走って彼女を追いかけている時、ふと昔の約束を思い出した。
「私、オードリーヘップバーンみたいな女優さんになりたい!」
「え、桜がこの人を目指すのはやめといた方がいいいよ。」
輝く目で彼女は夢を語ったが僕は冷静に返事をしたあの昔の出来事が脳内のスクリーンで蘇る。
「なんで?私頑張って綺麗になるもん。
「無駄な努力だと思うよ。」
「なによ!そこは応援してくれたっていいじゃん!」
「わかった。なら、将来僕が君をオードリーヘップバーンのこえる女優にしてみせるよ。
「どういうこと?」
「桜を最高の映画で最高の役で最高の撮影をしてやるって言ってるんだ。
「偉そうに!じゃ、シチュレーションしてみようよ。」
「いいよ、」
その日から僕はお父さんのカメラを使って桜をよく撮影していた。桜にも今の海と同じように何度も撮り直しさせられてたが、僕も桜も気を使わず自分が楽しいと思える時間だった。
そして、彼女が家の都合で母と出て行くことになった時、僕は母とバス停で彼女の見送りをすることになった。
「私が大きくなったら、私の夢叶えてくれる?」
「女優の夢だろ!再会したら絶対桜を最高の女優にしてやる!約束な。」
彼女の涙の質問に涙で答えた。
「ありがとう。」
そう言い残し彼女はバスに乗った。
バスが走り去ると共に彼女との過ごした日々が遠くなる気がして、青春ドラマのように諦めず、走り続けた。バスの窓を開け涙を流しながらこちらを向く彼女の姿がいつの間にか遠くに行ってしまっていた。
でも、今は彼女の後ろ姿が見え、近づける気がした。
「桜!」
「雪!どうしたの?そんなに息切れして。あ、わかった、お母さんに送ってこいって言われたんだ。」
息切れをしながら叫んだ僕に桜は笑顔で言った。
昔から彼女はとんでもなく感があたる。しかし今日はその感は外れていた。いや、言うならば外させた。
「いや、それもあるけど、忘れ物。」
「え、私、なんか、忘れたっけ?」
忘れた覚えのないように彼女の頭上にはクエスチョンマークが浮かんでいた。
「いや、僕の忘れ物。君をオードリーヘップバーンをこえる女優にする。」
「雪…思い出すの遅いよ」
彼女は笑いながら泣き出した。
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