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ー…天におられるわたしたちの父よ み名が聖とされますように。 み国が来ますように。 みこころが、天に行われるとおり 地にも行われますように…ー 大きな木々が鬱蒼と生えた森。 此処はエルの世界とジェダイトの世界の間にある静かの森と呼ばれる場所。 僕達兄弟は、この物騒で誰も近寄らない森まで逃げてきた。 そこで見付けた長年誰も住んでいなかったであろう古びた小屋でひっそりと暮らしている。 生活感のない薄暗い部屋。薄汚れた白いレースのカーテンの隙間から見える窓からは、小鳥のさえずりを乗せた心地よい風が流れ込んでくる。 ここまで来れば誰にも見付からないだろう。 それでも不安になって僕は兄の手を離す事が出来なかった。 「もう大丈夫だよ、ウィツ。もう誰も追ってくる奴はいない」 ルイは優しく僕の髪を撫でてくれた。 僕にとって彼だけが信頼出来る相手だった。 「ウィツ、俺は絶対お前を見捨てたりはしない。例え血が繋がってなくても、純血のエルでなくてもいい。俺にとってたった一人の大切な弟なんだ」
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