お引っ越し。

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そして愁人の実習も終わり、待ちに待ったマフィンを食べようと鞄を開けた時だった。 「…ない、1つない!」 確かに2つ貰ったはずのマフィンが、実習のうちに1つ消えていたのだ。 他人の鞄を開けるなんて非常識なやつはそういない。 いたとしてもそれは予想できる相手、つまり親友の域に達している相手だろう。 そうとなれば、彼の頭の中には一人の男しか浮かばなかった。 「千比絽!!」 「愁人、どうしたの? 何だか人を殺す前みたいな顔してるよ?」 千比絽と呼ばれた男は爽やかで、泣いている人、怒っている人、喜びまくっている人、すなわち誰でも正常な状態に戻すと言われている。 だが、今は彼の爽やかさも逆効果でしかなかった。
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