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車が走り出して少したった後、ようやく落ち着いたらしい麒縒。
「……ふぅ。で、どこ行くんだ?」
「いや、何も考えてないが?」
「はぁ!?」
窓から外の景色を見ていた麒縒が何気なく聞けば、朧から返ってきたのは目的地はないという答え。
「たまには良いだろ? ただドライブするのも」
「……まぁ、そうだけどよ」
「家に帰るのはいつになるか分からないがな」
「ッ!」
少し不服そうにしながらも納得した麒縒だが、次の朧の言葉に反応し、顔を朧に向けた。朧は前を見て運転したまま、悪戯が成功した子供のように笑っていた。
「おまっ……」
「なんだよ。折角のドライブデートなんだ、良いだろ?」
「デートって……」
「俺はお前に誘われた時から、そのつもりだったぞ?」
「……//」
久々に2人で外出したのだ、麒縒だって期待していなかった訳では無い。だが、すべて読まれていたとは考えていなかったのだ。
「今日は寝かせないからな」
「……望むところだ」
売り言葉に買い言葉。麒縒は、挑発は無視せずに乗るタイプだ。朧からなら、なおの事。
それが、今日1日の麒縒の運命を変えることになるとは、思わなかったのだろう。言葉の真意を知るのは、挑発した朧のみ。
「安心しろ、楽しませてやるから」
「当然」
楽しそうな2人を乗せ、車は走っていく。
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