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街中を走りながら、朧は隣の麒縒に問いかけた。
「しかし、珍しいな? お前がドライブ行きたいと言うなんて」
「あぁ……寝ぼけながら起きてテレビつけたら天気予報やっててよ。今日の天気は快晴だって言ってたからなぁ」
風を浴びながらそう答える麒縒。
「で、何故ドライブ?」
「気分だな」
「なるほど」
気分だから、で納得できてしまうあたり、この2人はいいコンビなのだろう。
車は市街地を抜け、なお走る。風景は建物の群れから牧草の草原へと変わっていった。道路も黒いアスファルトから茶色の砂利道へと姿を変えた。
風に当たっていた麒縒が自分の異変に気づいたのは、砂利道を走り出して少し経った時だった。
「……っ」
「どうした?」
「何でもねぇよ……」
何でもない訳が無い。朧に聞かれたからそう答えただけである。
(身体が……熱い)
まるで身体が燃えているように熱い。だが、熱がある訳では無いのだ。風邪を引いているわけでもなければ、平均体温が高い訳でもない。
(こんなに熱いなんて……まるで、朧に……)
そう考えた時、麒縒はハッとした。この熱さはいつも感じているもの。朧と夜の遊びをしている時の――媚薬を打たれた時と同じ。
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