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「朧……ッ! 盛りやがったな……!?」
「ふふ……気付くのが遅いな、麒縒」
身体の熱さに耐えながら顔を向ければ、前を向いたままニヤリと笑う朧。
「さぁ、いつ盛ったか分かるか?」
「オレが口にしたのなんて、さっきのコンビニの缶コーヒー位だ……まさか」
「缶コーヒーならぬ”感じるコーヒー”、ってな」
何に入れられていたのか気付き、ハッとする麒縒を横目で見ながら、朧は楽しげに笑う。
「缶に穴開けて入れたのさ」
「穴なんてどこにも……」
「缶の裏だ。そこなら気付かないだろ?」
「……なるほどな」
やられた、と麒縒は額に手を当て空を仰いだ。
確かに、缶の裏なんて見ることはないだろう。開けて飲むだけなのに、わざわざそんなことをする理由がない。
そこを突かれたのだ。なにか仕掛けてくるとわかっていたはずなのに、麒縒は読みきれなかった。朧の作戦勝ちである。
「……けど、オレがあの場で飲まなかったらどうするつもりだったんだ?」
「いや、お前はあの場で絶対に飲んでいた」
「何で断言出来るんだよ……」
見抜けなかった悔しさからか、思わずため息をつく麒縒。
「毎朝コーヒーを飲むお前の事だ、買ってやれば飲むと思っていた。それに、これからドライブだと言っているなら車が動く前に飲むだろうし、コンビニにゴミ箱があるのにわざわざ車で飲むとは思えなかった」
「つまり、オレが後から気付いても証拠はコンビニのゴミ箱の中だから隠し通せたってことか」
「そういう事だ」
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