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「いいか、よく聞けよ?
君を私の世界に転生させて、私はその様子を見て暇を潰す、つまりこういうことだ」
「え、え?ということはあんたが少女の姿になってボールを追いかけていたのは……」
「そう、助けようとしたものを転生者にするつもりだった。
だから君だからどうこうということではない。言っただろう?気まぐれだって」
「おぉう……俺間抜けなんじゃ……」
「そうでもない。君は第二の人生を送ることで、『歩み直せる』……悪くない話だろう?」
「……」
「君の人生、むしろ悔いしかなかったのだろう?何か楽しいことでもあったか、言ってみよ」
「なんで……そんなこと……」
「目を見れば分かる。君の目は死んでいたからな」
榊は俺の顔をじっと見据えた。
決して貶すわけではなく、かといって褒めるわけでもない、そんな表情で。
こいつには何もかも見透かされているような、そんな気までしてきた。
「……しかしだからこそ私は君に興味が湧いた。
なぜ私を助けた?君はそういう性格でもないだろうに」
その表情は、純粋な疑問をぶつけるものだった。
……確かに、あの時なぜ俺は飛び出したりしたのだろう。
「分からない……でもあの時は、何だか勝手に身体が動いたんだ……放っておいちゃいけない、とでも思ったのかな」
「ほう?」
「俺、昔はヒーローになりたかったんだ。
知ってるかな、覆面ライダー……あれはフィクションなんだけど、でも格好よかったんだ。
困っている人や弱きものを助け、戦いで傷つき倒れそうでも、決して弱音は吐かない。
そんなヒーローに憧れてた」
「ヒーロー、か」
「何て言うんだろうな、最後くらいはヒーローになりたかったのかなって。
多分そうなんだと思う」
「そうか、馬鹿なんだな」
「バッサリだな!?」
「自分の命を投げ打ってまで『弱者』を守る精神は理解に苦しむ」
「いや、まあ……自分でも馬鹿だなあとは思うけど」
「……だがその『正義感』、気に入った
私は君が拒否をすれば止めないつもりでいたが、予定変更だ。
君が私の世界で生き抜く様、ぜひ見届けたくなった!」
榊は口角を上げ、そう言った。
なんか笑うイメージじゃなかったから、こう、意外だった。
「君は私をなんだと思っているんだ」
地の文に干渉しないでください
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