榊の気まぐれ

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「____参った」 あれから何分経ったのか分からないが、もう体力の限界だ。 何しろ、俺がどれだけ攻撃しても『全て避けられる』のだから。 「ふふ……おっと、酷い顔だな」 目を開け、俺の顔を見た榊が言う。 「ぜーッ……はー……ッ……い、いや、あんだけやりゃあ普通……こうなるって……!」 「それもそうだな」 榊は納得した様子でうんうん、と頷いた。 「……っはあぁぁ……そんなことよりあんたはなんで汗ひとつかかず、呼吸も乱れてないんだ?」 「呼吸法もあるが、私は最小限かつ最適な動きで攻撃をかわしていたからだ」 「ど、どうやって避けてたんだ?」 「空間の流れを読むんだ。そうすれば自然と敵が何をしているかが分かる」 「そんなアニメみたいなことできるのか!?」 「できるとも。少なくとも私の世界ではこれくらいできるのが普通だ」 榊の……世界…… 「おっ、目を輝かせたな?」 「いや……その……」 「ふむ……では、こんなことはしてみたくないか?」 榊は少し離れると、スッと構えをとった。 「何を____あっ!?」 そして放たれた、美しい正拳突き。 その拳が空間を歪めている。 「嘘だろ……?」 「こんなことは?」 上段回し蹴り……美しい弧を描き、空間をスッパリと裂いて見せた。 「こんなことも!」 振り下ろされた拳……地面に当たるか当たらないかの距離で寸止めされたそれは、凄まじい風圧を生み出した。 そして俺の心臓が、高鳴り始めているのが分かった。 「……なりたい……」 「ん?」 「できるようになりたい!俺だって強くなりたい!」 「……よし、よく言った」 榊はまた笑った。 「そうと決まれば早速転生だな。 一応言っておくが、君の意識を残したまま赤ん坊から再スタートだ」 「えっと、世界の知識とかは……」 「親から学べ」 は、はあ……。 「他に質問は?」 「あの!また会えるかな?」 「うむ、容易いことだ。しかし何故だ?」 「強くなったら、またあんたと組手がしたいんだ。今度こそ一撃入れてみせるよ」 「ふふっ……一撃とは言わず、負かせてみよ。私は待っているぞ」 「……おう!必ず!」 「よし、それじゃあ……」
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