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今夜、ラブちゃんが俺の部屋に来る。
今夜だ!
バイト終わりに迎えに行って一緒にウチへ。
『自分がバイトの日じゃないのにわざわざ迎えに行く』ということに気分が上がる。
さらに、さっきまでラブちゃんと小教室にいた。
夏休み直前のこの時期、エアコンの入っていない小教室は、外よりはマシだがじっとりと暑かった。
けれど、そんな室内すら涼しく感じられるほど俺は熱くなった。
そう、俺はあの教室でラブちゃんに太ももを少しだけペロペロさせてもらい、天国を見た。
俺の首に絡み付くラブちゃんの温かな足。
苦おしいまでの幸せ。
実際、首が絞まり過ぎてちょっとだけ『死ぬかも』とも思った。
けれど、天国の滞在時間は短く、今夜会っても再びあのラブちゃんの太ももの間という、この世の天国へ行ける保証はない。
またあの場所へ確実に行くためには、ラブちゃんの『惚れさせてみろ』という超難問をクリアする必要があるのかもしれない。
そのためにどうすればいいか……。
……。
全くわからない。
せめて何か手がかりだけでもないか、藁にもすがる思いで、俺はとにかく調べてみることにした。
調べ物と言えば図書館。
モテる男と言えば、ダンディーな男。
というわけで、ダンディズムについて調べる。
「金払いはよくしろ、明るくふるまえ。特定の女とばかりしゃべるな。そして言い寄られたらNOと言え」
白洲次郎
NOと言え…だと?
そんな、ラブちゃんにいい言い寄られたとして、NOなんて言えるわけがない。
と思ったけど、ラブちゃんがさわってくれるというのを、二度も断った。
ダンディズムとは『やせ我慢』らしい。
したよ。俺はやせ我慢を。
あの後、やっぱしてもらえば良かったかもと、何度悶々としたことか。
ラブちゃんの指を思い出しただけで、欲情してしまった夜もある。
『ダンディな酒の飲みかた』『ダンディな食事』…。
こだわりを持て?
確か、ラブちゃんはビールにこだわってたな。
酔って騒ぐな、酔いつぶれるな。
う……。
そこまで騒ぎはしないけど、バイト先のイベの時に酔いつぶれた。
しかも、飲めない焼酎を飲むというやせ我慢の結果だ。
わからない。ダンディズム。
俺がやせ我慢をすると、結果ロクなことにならない気がする。
ダンディな男はレディファースト…。それはどうでもいい。
テーブルに着くときに椅子を引くのはいいが、ドアを開け女性を先に行かせるだなんて…。
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