夢か現か

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美代奈の手をぎゅっと握りしめる。 「ちょっと痛いって……」 今、確かに人の声が聞こえて、真司ははっと息を飲む。 見ると、美代奈は瞼を半分持ち上げたまま、口で何かを伝えようとしている。 「真司……怪我してるじゃない。どこかで転んだの?大丈夫?痛くない?」 消え入りそうな声だったが、それは真司の耳にもはっきりと聞き取れた。こんな時に他人の心配をするなんてとんだ大バカ者だ。 真司は嬉しさのあまり、美代奈をこれでもかというくらい強く抱き締めた。泣いていたのを見られたくないという思いもあったのかもしれない。 とにかく意識を取り戻したのなら、ここにいつまでも留まっているわけにはいかない。真司は「少し待っててくれ」と言い残し、職員室前に設置されてある公衆電話へと急いだ。 1、1、9とボタンを押し、三度目のコール音のあと、『どうしましたか。火事ですか?それとも救急ですか?』と野太い男の声がした。 真司は電話越しの相手に涙ながらに訴えた。 「お願いします。俺の大切な人が死にそうなんです。助けてください!」
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