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「ちょっと、真司ー!美代奈ちゃん、今日も迎えに来てくれたわよ。学校どうするのー」
階下から母の声が聞こえてくる。真司は昨日と同じように布団にくるまって、この場をやり過ごすことにした。
かれこれ一週間は続くこの不毛なやり取りに、母もほとほと呆れ果てたようだった。不登校初日の日の朝はわざわざ部屋に押しいってまで行かせようとしたのに、今となってはそれすらもしない。
階下で何やら短い会話が交わされたのち、玄関の扉が閉まる音がした。真司は内心ほっとしながら、のそのそと布団の中から這い出る。
あれから美代奈とは病院で一度見舞いに行ったきり会っていない。というか、会わす顔がない。
聞いたところによると、美代奈が額に負った傷は残ってしまうらしい。美代奈は完全に中身は男だが、容姿は平均以上に整っている。少なからずショックは受けただろう。
さらに、今回の一件で、小嶋達は先生や他の保護者からこっぴどく絞られたそうだが、元を辿れば全ての発端は自分の弱さにある。
そんな自分がいったいどんな顔をして、美代奈と向き合えばいいのか。
「はあ……」と重いため息を吐いていると、廊下からコンコンというドアのノック音が響いてきた。
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