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「まったく、おとなしくしていれば、こんなことにはならなかったのに。でも、仕方ないか。だって今日はエイプリルフール。嘘をついても怒られない日なんでしょ?いやー、こんな素晴らしい日を作ってくれたこの世界には感謝しなくちゃね!」
ぴのきおの鼻はみるみる縮んで小嶋の背中へと吸い込まれていく。
「はは、悪い冗談だろ。これ」
真司は頭の中がドロリとした液体に満たされていくのを感じた。やがて、それは背中から足へと流れて身体中を巡っていく。
「さてと、この邪魔な死体どうしよっか」
鼻先を赤黒く染めたぴのきおが、小嶋の身体を足蹴にする。
小嶋は自ら作りあげた血溜まりの中で息絶えていた。数分前までの威勢はもう見る影もなく、目を見開いたままピクリとも反応しない。
「いやーーーー!」
ここに集められたうちの一人が耳をつんざくような悲鳴をあげた。それを皮切りに皆、蜘蛛の子を散らすように逃げまとう。場は一転として混乱の渦に飲み込まれた。
「本当に懲りないなぁ、下等種族どもは。これじゃ、彼はただの無駄死にだよ」
ぴのきおは掌を上に向け、あきれたように首を振る。そして大きく息を吸いこむと、大声で何か呪文のようなものを唱え始めた。
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