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「海は赤いし、夏は寒い。鳥は飛べないし、魚は泳げない。日は西から昇るー!」
ドスドスドスドスドス。
あれだけ騒がしかった喧騒がピタリと止む。真司は首だけを動かして辺りを見渡した。
五人。名前も顔も知らない、真司と同じ高校生くらいの男女が地べたに這いつくばっている。五人とも見事に左胸を撃ち抜かれ、口から血を吐いていた。
「あーあ。お前らのせいで五人も殺しちゃったじゃないか。でもこれはボクのせいじゃないよ。ボクの話を聞かないお前らのせいだ」
ぴのきおの言葉に、何も言い返すことが出来ない。全員、その場から動けず、泣くことさえ許されなかった。
「アハハ、分かればいいんだヨ!やっぱりキミ達人間は頭がいい。痛みと恐怖を与えるだけで素直になる。知性のない虫ケラじゃこうはいかない」
木でできた関節で器用に指をパチンと鳴らすと、六つの死体は跡形もなく消える。
もはや、人が消えたくらいでは誰も驚かなかった。ぴのきおも何事もなかったかのように話を進める。
「それでね。単刀直入に言わせてもらうと、キミ達の世界は悪意に満ちすぎている。著しい科学の発展と共に人間の心はすさみ、これまで人間に恩恵をもたらしてきた自然にさえも牙を剥き始めた。このままでは地球が滅ぶのも時間の問題。だから、その元凶である現人類は一度滅びるべきなんだ。そして、ボク達、新人類がこの世界を支配する。キミ達はその足がかりだ」
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