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ぴのきおの声がやんだ頃合いを見計らって、レイナがおずおずと手を上げた。
「どうしたの?レイナちゃん」
「あの……私、目が見えないから自分のリモコンを落としたとき、それが自分のかどうか判別が出来ないんだけど」
ぴのきおが「あちゃー」と自分の頭を小突く。
言われてみればそうだ。もしレイナのリモコンが他人のリモコンと入れ替わっていたとしても、彼女はそのことに気づけない。
「ごめんごめん。ボクとしたことがうっかり忘れてたヨ。じゃあ、レイナちゃんはこっちのほうを使って」
ぴのきおはポケットをまさぐると、一見同じようにも見えるリモコンを一つ取り出す。
「リモコンの裏面を触ってみて。そこにレイナちゃん用に点字で『レイナ』って名前が書いてあるでしょ?」
レイナは指先で裏面をなぞり、こくりと頷くと、元々持っていたリモコンをぴのきおに返却する。忘れていたというわりにはやけに準備がいい。
「じゃあ、説明も終わったことだし、あとは実際にやって覚えてもらったほうがいいかもネ。でもゲームを始める前に一つ忠告を……」
ぴのきおがちらりと真司を見やる。
「そう言えば、前回のゲームで、チップを壊してしまったおバカなプレイヤーがいたんだ。だから、今回からは無理に取り外そうとしたり、破壊しようとしたらそれだけでも死ぬ仕様になってるんで、くれぐれも変な気は起こさないように」
そう言って、指がパチンと鳴る音がしたときには、既にあの嘘つき者の姿はどこにもいなくなっていた。
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