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「いいかい?これから先は自分以外の存在は全て敵だ。そして、周りのやつらはそんなキミ達を陥れようと、言葉巧みに近づいてくるかもしれない。だから、キミ達はボクの言葉だけを信じてまっすぐ突き進めばいい。そうすれば、その辛く険しい階段の先にはきっとキミ達の目指すゴールが待ってるはずだから」
……これだけ?と真司の中で疑問符が浮かんだ。
これのどこがアドバイスなのだろう。不和を煽ることで、こちらが勝手に自滅するのを期待しているのだろうか……。
「こ、これってクリア出来なかったらどうなるの?ま、まさかさっきの人達みたいに死ぬってことはないわよね?」
意図を予想していた真司の後方から、ふいに女の声がした。声は妙に上擦っていて、振り向かなくても怯えていることが分かる。
ぴのきおは首を傾げていたが、これがまだ何かの悪い間違いであってほしいという願いは、今やここにいる者の総意でもある。全員、懇願するような眼差しでぴのきおを見つめた。
しかし、その願いは儚くもあっさりと打ち砕かれてしまう。
「あっはっは!もちろんクリア出来なかったやつは殺すに決まってるじゃないか。ボクがなんのために、あの頭が弱そうなやつをわざわざ煽ってブッ殺したと思ってるのさ。まったくキミ達は本当にジョークが上手いんだから!」
あまりの温度差に真司は得体の知れない恐怖を覚えた。生物と言うのは種族が違うだけでここまで冷たくなれるのかと。
……いや、違う。これは人間が、家畜である豚や鶏を人間ではないという理由だけで平気で殺しているのと同じだ。所詮、家畜が何を喚いたところで、人間の心に響くはずもない。
つまり立場が逆転しただけで、自分達は今、ぴのきおにとっての家畜でしかない。真司はそのことを改めて認識させられた。
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