追悼

4/10

660人が本棚に入れています
本棚に追加
/733ページ
「でも、実はあともう一つ腑に落ちないところがある」 「え、まだあるの?」 「うん。そもそもこのゲームは、裏切ってもそんなにメリットってないんだよ」 もう一度『囚人のジレンマ』について思い返してみてほしい。 囚人のジレンマでは仲間を裏切ったほうが得をする。これはどうしようもない事実だ。 だが、このゲームにおいては裏切っても大したメリットはない。そればかりか、裏切って一人勝ちするには大きな障害が伴う。 「囚人のジレンマはたった一回の裏切りで釈放だけど、このゲームの場合はそれらを三回繰り返さないといけないんだ」 三回という数字は一見少ないように見えるが、実はかなり厳しい。 その理由としては、やはりこのゲームのセット数が七セットしかないからに他ならない。 「一回目は隙を突けて、まんまとポイントを得られるかもしれない。だけど、たった一回の裏切りが、このあとの展開を大きく狂わせてしまう」 「どういうこと?」とレイナが聞く。 「一度でも誰かが裏切れば、この先二度と共闘しようと言うやつはいなくなるだろ?そしたら、みんな自分勝手に票を入れ始めるから完全に運任せになる。そんな状況であと2ポイント得るのはちょっと運ゲーすぎる」 「な、なるほど」 本日二度目の呟きを零すレイナ。
/733ページ

最初のコメントを投稿しよう!

660人が本棚に入れています
本棚に追加