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「でも、実はあともう一つ腑に落ちないところがある」
「え、まだあるの?」
「うん。そもそもこのゲームは、裏切ってもそんなにメリットってないんだよ」
もう一度『囚人のジレンマ』について思い返してみてほしい。
囚人のジレンマでは仲間を裏切ったほうが得をする。これはどうしようもない事実だ。
だが、このゲームにおいては裏切っても大したメリットはない。そればかりか、裏切って一人勝ちするには大きな障害が伴う。
「囚人のジレンマはたった一回の裏切りで釈放だけど、このゲームの場合はそれらを三回繰り返さないといけないんだ」
三回という数字は一見少ないように見えるが、実はかなり厳しい。
その理由としては、やはりこのゲームのセット数が七セットしかないからに他ならない。
「一回目は隙を突けて、まんまとポイントを得られるかもしれない。だけど、たった一回の裏切りが、このあとの展開を大きく狂わせてしまう」
「どういうこと?」とレイナが聞く。
「一度でも誰かが裏切れば、この先二度と共闘しようと言うやつはいなくなるだろ?そしたら、みんな自分勝手に票を入れ始めるから完全に運任せになる。そんな状況であと2ポイント得るのはちょっと運ゲーすぎる」
「な、なるほど」
本日二度目の呟きを零すレイナ。
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