追悼

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「うーん、はっきりとは言えないんだけど、前に会ったときとはまるで別人だなって印象を受けたんだ。こう……何かを決意したような感じ?」 泉は自信なさげな口振りで話すが、時折こちらの顔色をちらちらと窺ってくる。 いくら相手がこれから運命をともにする仲間と言えど、このことを話すには強い抵抗があった。 しかし……。 「ああ、実は……」 もう下は向かないと美代奈に誓ったばかりじゃないか。 真司はこれまでの出来事を全てありのままに話した。 「そっか……それは辛かったね」 持ち前の明るさも、この時だけは影を潜めているようだった。泉は沈痛な面持ちで、真司に言葉をかける。 「うまくは言えないけど、黒川さんも、今の君を見て喜んでると思う。大切な人を亡くして、その死を悼む気持ちはとても大事だ。けど、いつかはその悲しみも乗り越えなければならない。だから、そんなに自分を責めたらダメだよ?真司くん」 「ああ」 真司は泉のおかげで少しだけ肩の荷が降りたような気がした。
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