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泉が今度は正人のところへ行くと告げて去ったあと、真司はそれとなく水を向けてみた。
「どうしたんだ?そんな浮かない顔して」
「……分からないの」
「分からないって何が?」
「なんていうか……。彼の考えてることが読めないの」
「そりゃそうだろ。普通は人の心なんて読めるはずないからな」
レイナは緩くかぶりをふる。
「ほら、私って目が見えないでしょ?だから、いつも誰かと話すとき、声色から相手の感情を読み取るように心がけてたの。でも、いつの日からか、声を聞くだけで、その人の考えが本当に読めるようになっちゃったの」
苦い思い出がよみがえる。彼女に辛酸をなめさせられた、第2のゲーム『ロシアンダウト』。その驚異を身をもって体験した真司だからこそよく分かる。
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