追悼

9/10
661人が本棚に入れています
本棚に追加
/733ページ
泉が今度は正人のところへ行くと告げて去ったあと、真司はそれとなく水を向けてみた。 「どうしたんだ?そんな浮かない顔して」 「……分からないの」 「分からないって何が?」 「なんていうか……。彼の考えてることが読めないの」 「そりゃそうだろ。普通は人の心なんて読めるはずないからな」 レイナは緩くかぶりをふる。 「ほら、私って目が見えないでしょ?だから、いつも誰かと話すとき、声色から相手の感情を読み取るように心がけてたの。でも、いつの日からか、声を聞くだけで、その人の考えが本当に読めるようになっちゃったの」 苦い思い出がよみがえる。彼女に辛酸をなめさせられた、第2のゲーム『ロシアンダウト』。その驚異を身をもって体験した真司だからこそよく分かる。
/733ページ

最初のコメントを投稿しよう!