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なんと、そこにいたのは……。
「私に近づかないで。近づいたらこれで刺すわよ」
今までそれをどこに隠し持っていたのか。カッターを握りしめたレイナが、こちらに向けて刃をカチカチと突き出していた。
「レ、レイナ?」
突然の出来事に立ち尽くすことしか出来ない真司。やがてレイナの目に宿る意思が本物であることを悟ると、真司は刺激しないように話しかけた。
「ど、どうしたんだよ。ま、まずはそれを置いて、お、落ち着けよ」
自分でも情けないほどに声が掠れている。レイナが何でこんな凶行に走ったのか全くもって理解できない。
「ごめんなさい。私、真司にひどいことしたよね。だから、私はこれからその報いを受けるの」
緊張しているのは真司だけではなかった。レイナの声の波長も不安定だ。
「なんだ、そんなことかよ。俺はそんなこと全然気にしてないぞ。だから、その手に持ってるやつを放せよ」
話を聞く前に、せめてカッターだけでも手放させようとするが、真司が説得すればするほど、刃は鈍い光を増幅させて威嚇してくる。
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