661人が本棚に入れています
本棚に追加
/733ページ
「はあ……」
悩めば悩むほど、深みにはまるような気がして、真司はベットの上に倒れこんだ。背中がふんわりとした感触に包まれる。
「あ、ごめん。起こしちゃったか?」
どうやら倒れたときの揺れで、レイナが起きてしまったらしい。相変わらず、小動物のような可愛らしい仕草で目の下を擦っている。
そして、真司の視線はある一点に釘付けになった。
し、し、下着が見えてる!!
寝相のせいなのか、なんなのかは知らないが、レイナの制服のシャツがはだけて下着が露出している。いや、もっとその奥。下着に収まりきらない、たわわに実る二つの果実が今にも零れ落ちそうになっている!
真司が慌てて顔を背けると、レイナは不思議そうな顔をする。小首を傾げるなり、人の気も知らないでクスクスと笑いだした。
「真司、どうしたの?顔、赤いよ。ふふ、お猿さんみたい」
いったい誰のせいだよ!?と、真司は心の中で突っ込まずにはいられない。
というか、レイナって結構着痩せするタイプなんだな。などと考えていると……。
………………ん?
「あ、あのさ……レイナ。少し聞きたいんだけど、さっきレイナなんて言った?」
真司が上ずった声で聞くと、レイナが反対側に首を傾げる。
「……お猿さんみたい?」
「いや、違う違う。その前」
「……顔が赤い?」
真司は大きく二回頷く。
だが、当の本人は未だに自身の身に降りかかっている『ある異変』についての自覚がないようだ。きょとんとしながら、ずっとこちらの挙動を『凝視』している。
真司は震える指で、自身の眼球を指し示した。
「レ、レイナ。目、目、見えてる……」
レイナがまた反対側にきょとんと首を傾げた。それから、だんだんと目を大きく、丸くして……。
「「えーーーーーーーーー!!!」」
二人の声が、すっかり春めいた澄んだ朝焼けに響き渡る。
果たしてそれは幸福の訪れか。
それとも不吉の前兆か。
この時の俺達にはまだ知る由もなかった――。
最初のコメントを投稿しよう!