異変

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そうなると、これまでのゲームで命を落としたプレイヤーに関する記憶も人々の記憶から消えさっていることだろう。行方不明者がこんなにも出ているのに事件にならないのはおかしいと思っていたが、つまりはそういうことだったのだ。 真司は昇降口に着くと、靴を履き替えながら、今のどうしようもない現状を嘆いた。 自分のあずかり知れぬところで、いったい何が起ころうとしているのか。 第3のゲームが終わってから、春休みも終わり、もう10日が経とうとしている。 こうしている間にも、ぴのきおの計画が着実に進んでるかと思うと、最近は生きた心地がしない。 昇降口を抜けると、真司は胸の鬱憤を晴らすように大きく息を吐き出した。校庭では、春の大会を目前に控えた運動部員の真上を、柔らかい四月の風がそよそよしく薙いでいく。 世界はいつもと変わらないというのに、この世界に美代奈だけがいない。 真司は奇妙な感覚に囚われながらも、美代奈のいない残酷な世界へと一歩足を踏み出していった――。
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