第1のゲーム~モンティホール~

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気づいたときには馬乗りの体勢になって、彼女の首を絞めていた。彼女は抵抗しようと長い爪を少年の腕にギリギリと食い込ませていたが、男の腕力の前にびくともしない。 次第に彼女の呼吸は弱まっていき、体を痙攣のように震わせ、焦点の合わない瞳でごめんなさい、ごめんなさいと懇願してきた。 瞬間、恐ろしいほどの後悔と恐怖に襲われ、少年は腕の力をとくと、塞き止められていた空気が一気に彼女の肺へとなだれ込んでいく。息苦しそうに咳き込んでいたが、命に別状はなさそうだった。 少年はしばらくの間、その場で茫然と立ち尽くしていた。同時にあの日、彼女と初めて出会ったときに抱いた感情が沸き上がってくる。 そうか……やっと分かった。あれはきっと恋なんかじゃなかったんだ。僕はあのとき、この自信に満ち溢れた顔をめちゃくちゃにしてやりたいと思ったんだ……。 結局、このあと、たまたまその場を通りかかった教師の手によって事なきを得た。少年は彼女の家族に謝罪し、示談が成立。警察沙汰にはならなかった。 だが父親には勘当をくらい、親子の縁を切られ、挙げ句の果てにその噂は学校中に瞬く間に広まっていった。居場所を失った少年は転校を余儀なくされ、遠い親戚の元へと預けられた。 今ではもう、あの時のような衝動的な行動は鳴りを潜めている。しかし、あのとき感じた言い様のない快感は忘れることが出来ない。そして、政治家への道は閉ざされたが、もうそんなことに未練はなかった。 それよりももう一度、自分の目の前で誰かを屈服させたい!もう一度、あの屈辱に歪められた顔が見られるのならなんだってする! それからというもの、少年が引っ越した地域では今も同一犯と思われる女子高生を狙った暴行事件が後を絶たず、犯人像は未だ輪郭すら掴めていないという。
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