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後日、この事件の真相は、金銭目的の犯人が突発的に引き起こした犯行として処理された。
いくつか不審な点が多く見られたものの、事件の第一発見者である僕の証言に矛盾が生じなかったことや、それ以外の犯行を示唆する証拠がなかったことが、この結論に至った決め手となったようだ。
しかし、ここまでしてようやく手に入れた安寧もそう長くは続かなかった。
事件が起きてから一ヶ月もたたないうちに、母が僕と距離を置くようになったのだ。
理由は分からない。もしかすると、この事件の犯人が僕だということに薄々勘づき始めたのかもしれない。
どちらにしても、その日から母との会話が極端に減り、とうとう目も合わせなくなった。
僕は嘆いた。というよりも、理解に苦しんだ。僕は母のためを想って、あいつを殺したのに、なぜ嫌われなくてはならないのだろう。こんなのあんまりじゃないか……。
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