【番外編】ストックホルム|症候群《シンドローム》

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僕は道行く女性に声をかけては、誰もいない廃墟へと言葉巧みに誘いだし、数日間にも及ぶ拉致監禁を行った。 肉体的にも精神的にもたっぷり痛めつけて、極限状態へと追い込む。そうなった人間は脆くて壊れやすい。あとはちょっと優しくすれば人は容易く落ちる。 これを心理学用語ではストックホルム症候群と呼ぶらしいけど、僕から言わせればこんなのクソだ。 だって、自分をこんな目に遭わせた元凶を憎むならまだしも、好意を寄せるなんてもってのほかだ。 そうなると、母もそれに近い状態だったのかもしれない。あんなクズでも、母にとっては、かけがえのないたった一人の伴侶だったのだ。そうでなければ、僕のした正義の行いは、母に感謝されこそすれ、恨まれる筋合いなんてないのだから……。
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