【番外編】ストックホルム|症候群《シンドローム》

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◇◇◇◇◇◇ 「おっと」 ついつい考え事をしながら歩いていたせいか、道のド真ん中ですれ違った通行人と肩がぶつかってしまった。 その通行人は二人組で何だかガラの悪そうな顔をしていたけれど、良識のある僕は「ごめんなさい。大丈夫ですか?」と優しく声をかけておく。 「いってー。こりゃ肩の骨砕けたわ。ってことで慰謝料よこせよ」 まさか、平成の時代にもなって、未だに昭和みたいな脅し文句を使ってる奴がいたことに僕は軽く引いた。 「おい、聞いてんのか?俺は今むしゃくしゃしてんだよ。謝罪はいいから、持ってる金を全部渡して早くどっか行けよ」 こいつは自分で作った設定を忘れてるのだろうか。あろうことか、骨が砕けてるはずのほうの腕で僕の胸ぐらを掴んできた。 「おい、マズイって一条。昨日のことでイラついてるのは分かっけど、こんなとこをまた誰かに見られたらやべえよ」 一条と呼ばれた高校生くらいの男は、仲間の制止も聞かず、腕の力を緩めようとしない。一際大きな声を出して、怒鳴り散らしてくる。
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