【番外編】ストックホルム|症候群《シンドローム》

18/20
660人が本棚に入れています
本棚に追加
/733ページ
「あ、スマホのこと忘れてた」 僕は後ろポケットに手を回し、通話状態を維持したままのスマホを顔の前に持ってくる。 実はというと、このスマホもあいつから拝借したものだったりする。まあ、黙って借りたのは悪いと思うけど、返そうとしたらあっちが勝手に逃げだしたのだから僕は何も悪くない。これはそこのドブにでも沈めておこう。 ぽちゃんと音をたてて、黒い水飛沫が地面を濡らす。 ちなみにさっきの通話相手は警察だ。男と激しい口論になる前に、僕は彼のスマホを使って110番をかけておいた。過去に監禁してた女が持っていた機種と同じ機種だったから、後ろ手での操作もさほど難しくはない。
/733ページ

最初のコメントを投稿しよう!