【番外編】ストックホルム|症候群《シンドローム》

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では、その状態でどうやってここの位置を警察に伝えたかというと、実のところ僕は何もしていない。 なぜなら警察はこういった事態に備えて、かかってきた電話の位置情報をGPSで特定することができるからだ。 そうとは知らず、同調行動(ペーシング)によって気が高ぶっていたあの男は、警察が聞いてる電話口の前で恐喝まがいの発言をべらべらと並べ立てた。終いには僕が発した『殺人』を仄めかすワードを耳にして、警察もかなり焦ったはずだ。これは一刻の猶予も許されないと。 だから、その危機が去った今、僕は素知らぬ顔で堂々と道の真ん中を闊歩していればいい。 どうせ、あいつのスマホは今はドブの中だ。指紋も拭き取って捨てたわけだから、僕に結びつく証拠は一切残っていない。 「やっぱり、あの男じゃ全然満たされないな」 僕は遠い空を見上げながら独り呟く。 こんなんじゃ、いつまで経っても母さんが僕を嫌いになった理由が分からない。 やはり、このどうしようもない飽くなき探究心を満たせるのは『君達』だけのようだ。
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