【番外編】ストックホルム|症候群《シンドローム》

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それから一時間ほど歩いて、ようやく僕が今日外へと赴いた理由――その目的地へと辿り着いた。 「そうか。あれからもう4年か」 それを眺めていると、あの頃の情景が鮮明に頭の中によみがえってくる。写真並みの記憶力を持つ僕にとっては、新鮮味のないごくありふれた一風景にしか過ぎないけれど、それでも懐かしまずにはいられない。 「おっと、いけないいけない。僕としたことが、つい武者震いしてしまった。こんなにもゾクゾクするのはいつぶりだろう」 僕は止まらない身体の震えをそれ以上の力で抑え込む。 「はぁはぁ、早く会いたいなぁ。真司くん。せっかく僕がプレゼントをあげたんだ。僕をがっかりさせないでおくれよ」 まだ見ぬ興奮に心を高鳴らせながら、僕は『その場所』へと足を踏み入れていった――。 ◇◇◇◇◇◇ ・用語解説 【ストックホルム症候群(シンドローム)】 スウェーデンの首都ストックホルムで起きた銀行強盗人質立てこもり事件が由来。被害者と犯人が同じ時間と場所を共有することで、被害者が犯人に好意を寄せてしまう現象。 【同調行動(ペーシング)】 相手の行動に対して、こちらがそれに同調すること。又、相手の承認欲求を満たすこと。 ちなみに、承認欲求とは、他者から認められたいとする感情の総称。今回の場合では、怒っていた一条が、泉に求めるべき反応は『怯える』である。 【反同調行動(ディスペーシング)】 相手の行動に対して、こちらが同調しないこと。 上司に怒られてるときに、こちらが毅然とした態度をとれば、怒りを鎮めることができる。
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