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「なあ、知ってるか。今日、人類は滅亡するんだぜ」
桜が舞い散るこの季節。殺風景なこの道にも淡く鮮やかな色がつき始める。
「…………マジ?」
そんな平和なひとときに、突如告げられた不吉な予言。
真司は身体をぶるぶる震わせながらも、そっけない態度で達也に返した。
「そんなわけないだろ」
間をおいて、達也も「バレた?」とおどけてみせる。
「嘘つくならもっとマシな嘘つけよ」
「仕方ねえよ、そんなポンポン嘘が出るわけないだろ」
「確かにな」と真司は苦笑した。
今日は4月1日。俗に言うエイプリルフールと呼ばれる日だった。
「それにしても、なんで俺たち二年生が今年の新入生のために入学式の準備なんてしなくちゃならないんだよ。貴重な春休みを費やしてまでよ」
薄紅色に彩られた空を仰ぎながら、達也が不満をこぼす。
頭上には風に流れる枝葉が踊るように揺れ、そこから漏れた陽の光が、彼の横顔にくっきりとした明暗を浮かび上がらせている。
「まあな。でも俺達も去年やってもらったんだから今度は俺らの番だろ?」
真司はアーチ状に続く桜並木の先をじっと見つめながら、一年前の記憶に思いを馳せた。
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