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若干、後悔しながら階段をおりていると、玄関の方から来客を知らせるチャイムが鳴り響いた。
こんな昼間に誰だろうと真司は不審に思った。
今、両親は仕事で外国のほうに出張しているため1ヶ月は不在。早く帰るという旨の連絡も受けていない。ということはまさか……。
嫌な想像が脳内を駆け巡る。
出るべきだろうか……。
そんなことを考えている間にもチャイムは2回、3回と繰り返されている。
案外、何かの営業かもしれないし、誰かが宅配で荷物を送ってきただけなのかもしれない。
真司は嫌な想像を頭の中から追い出すと、真相を確かめるべく玄関へと向かった。
玄関に到着してからも、しつこくチャイムは鳴り続いていた。
ピンポンピンポンピンポン。
「うるさいな……」
さすがに鬱陶しくなり、ついさっきまで抱いていた恐怖心はすっかり薄れていた。真司は殴り付けるようにしてドアを開けた。
「あっ!こ、こんにちわ」
扉の前に立っていたのは一人の少女だった。
「あ、あの……さ、桜木真司さんのお宅でよ、よろしいでしょうか!」
見るからに挙動不審で、目が泳ぎまくっている。
「はい、そうですけど……。何か用ですか?」
そもそも呼鈴の下に表札がかけてあっただろ、という無粋なことは言わないでおく。
少女は真司の素っ気ない態度を見て「はあ、やっぱり覚えてないんですね」とあからさまに肩を落とした。
ん?どういうことだ……。やっぱり覚えてない?
今いち状況が飲み込めない真司。
「あの……あたし、辻村茜です。三日前はどうもお世話になりました」
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