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真司もここでようやく二人の意図に気づく。
あの二人と話していたとき、てっきり茜は笑っていたように見えた。だけど、それは間違いだったんだ。彼女はただ無理をしていただけなんだ。
考えてみれば当然だ。あれからまだ三日しか経っていない。
自分達の目の前で大勢の人間の命が失われ、ゲームはまだ続くと言われた。
真司には達也と美代奈という頼もしい仲間がいたが、他のプレイヤーもそうとは限らない。それぞれが不安と恐怖に怯えながら孤独に夜を過ごしたのは言うまでもないだろう。
茜にはそれが耐えられなかった。だから仲間を求めた。
最初、玄関で会ったとき、妙に落ち着きがなかったのは、安心して張りつめた気持ちが緩んでしまったからだろう。呼鈴の下に表札があるのを見落とすほどに。
それから、彼女のズボンにも注目してほしい。裾の部分が特に汚れている。しかも、この汚れ、かなり真新しいものだ。
恐らく、彼女はあの日、三人が着ていた制服と名前だけを頼りに町中を駆けずり回ったのだろう。この三日間ずっと。
二人はそれを瞬時に見抜いていたんだ。
だからこそ一芝居うった。
「この俺をダシに使ってな!」
以上のことを真司は得意顔で三人に話すと……。
「え?別に俺はそんなつもりなかったんだけど……」
「普通そこまで考えなくても誰だって怖いのは分かるわよ。真司って絶対に打算で動くタイプの人間だよね」
……ひどい言われようだった。
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