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気まずくなった真司は心を落ち着かせようと、目を横に流す。僅かに開いたドアの隙間から美代奈の姿がちらりと見えた。
美代奈は達也との会話に没頭しているせいか、壁越しにも声が聞こえてくる。すごく楽しそうだった。
「二人って仲良いですよねぇ。なんだかあたし妬けちゃいます」
心を読まれたのではないかと内心でドキッとする。
「……えっ!?ど、どうだろうね。でも本人達から付き合ってるってことは聞いたことないなぁ。ははは……」
実際のところは分からない。二人はそれらしい素振りを見せたこともないし、学校でも二人が付き合っているという噂は耳にしたことがない。だからこれは真司の願望に過ぎない。
「ふふ、騙されましたね。あたしは真司さんと達也さんの仲が良いって意味で言ったんです。別にあの二人のことじゃありませんよ」
茜は悪戯っぽく笑うと、ごめんなさいと手を合わせた。
まんまと騙された真司は頭を垂れる。
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