束の間の日常

15/15
661人が本棚に入れています
本棚に追加
/733ページ
「やっぱり好きなんですね。いいんです。あたし、真司さんの気持ち分かってますから。だから、それまで待ってます」 茜は一方的に自分の想いを告げると、健気に微笑んでみせた。月明かりに照らされた彼女の顔がどこか儚げに見える。 胸の辺りがチクリと痛んだ。 「ささ、あんまり時間かけすぎると怪しまれますからね。早く布団取りに行きましょ!」 茜は一瞬で表情を切り替えると、いつも通りの彼女を装う。本当は芯の強い子なんだなと真司は感心した。 「ん?」 ここで真司はあることに気づく。 なんだろう?一瞬誰かの視線を感じたような……。 「まあ、いいか」 スマホを取り出して、何気なく時間を確認してみる。 23:59から0:00へと表示が変わった。 『ピーンポーンパーンポーン!夜の12時になりました。皆さんこれより楽しい楽しいゲームの時間デス』 束の間の平穏は突如終わりを告げた。
/733ページ

最初のコメントを投稿しよう!