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そのあとは三人で取り留めの無い話に花を咲かせた。達也と仲良くなってからは自然とこの三人で行動を共にすることが多くなった。
まだ三月の寒々しさを残す外の冷気は、肌を刺すように冷たいが、桜の花びらが横を掠める度に、もう春なのだと実感させられる。
ああ……俺は今、満たされている。
真司はこの時ほど、そう思ったことはなかった。
親しい友人がいて、乱暴だけどいつも側にいてくれる幼馴染みがいる。自分はきっと恵まれている。なのに時々、とてつもなく虚しくなるのは何故だろう。
自分の中で何かが急速に冷めていくのを感じた。
だが二人の会話に耳を傾けながらも、真司はその正体に薄々気づいていた。
恐らく二人は気にも留めていないのだろうけど、よく三人でいると周囲から冷ややかな視線を向けられることが、これまでに何度かあった。
美代奈も達也もクラスの人気者だ。頭も良くて、運動も出来る。加えて異性からもモテる。だからこそ、この二人がなんの取り柄もない自分と一緒にいるのが、周りの連中からすれば面白くないことなのだろう。
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