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「いい加減に起きろ! 今日は国王様に謁見する日だぞ。早く朝飯を食べて用意しろよ」
寝息を立てる幼い少女に向かって叫ぶと、少年は部屋を出て行く。
少女は顔を洗って眠気を飛ばし、少年の待つ部屋へと急いだ。
「おはよー、お兄ちゃん。今日は早起きだねっ」
「俺はいつも早起きだよ。サクラが起きないだけだろ? 今日は二度寝をせずに、顔を洗って歯を磨いただけでも偉いけどな」
「えっ、何で分かるの? 毎日おはようを言ってから顔を洗ってるのに……」
サクラと呼ばれた少女は、あどけない表情で少年を見つめた。
「俺がサクラを起こしに行ってから約十五分。二度寝をしていればまだ寝てるはずだし、起きれば時間を掛けずにここへ来るだろう? それと、いつもはもっと眠たそうな目をしているぞ」
サクラは大きな目をパチクリさせながら、テーブルに着き朝食を口に運ぶ。
「さらに言うと、今日はお城へ向かう前に、桜の森へ連れて行く約束をしたからな。俺が起こしに行った時、国王様という言葉でそれを思い出したんだろ?」
「もぐもぐ……お兄ちゃんは凄いね。私の事を全部分かってるみたい……あっ、この卵焼き、また焦げてるよ」
「卵の殻が入ったお前の料理よりはいいだろ。文句を言わずに早く食べるんだ。後ろに着替えも置いてあるからな」
振り返ると、黄色の可愛らしいワンピースが視界に入った。
「何で黄色のワンピースを着たいって分かったの?」
「サクラがお気に入りの服は二着ある。その内の一着である水色の服は、二日前に着ていた。今日はお城に行くと言ってあるから、もう一つの黄色いワンピースを選ぶというわけだ」
サクラは兄に向かって、小さな手でパチパチと拍手をした。
「さすが軍師の一族だね」
「まあな。いつか俺は国王様の軍師になって、光国を支える人材になるんだ」
「へえー……じゃあ、私もなる。私だって軍師の一族だからね」
少年は冷めた視線をサクラに向け、そっと呟く。
「お前には無理だと思う……」
「なんで? 私だってやりたいよ。ところで、謁見ってなあに?」
「……」
こうして、少年達は桜の森と呼ばれる場所に足を運び、暫く桜を眺めてから城へと向かった。
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