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「ねえ、お兄ちゃん……おんぶして……」
「頑張って歩けよ。ほら、城門が見えて……ん?」
荘厳なる城門の前には、背の高い老兵士の姿が見える。老兵士は少年達に気付くなり、鬼気迫る勢いで駆け寄って来た。
「ばかもん! すでに国王様はお待ちだぞ。何をしていたのだ、トウマ!」
「そんなに怒るなよ。時間には間に合っただろ? 血圧上がるぞ?」
「そうだよ、おじいちゃん。怒ってばっかりだと、ハゲるよ?」
「わしはフサフサじゃあ! このガキ共が……とにかく、国王様をこれ以上待たせる訳にはいかん。行くぞ」
トウマと呼ばれた少年と、サクラを両脇に抱えて走り出す。
歳を感じさせない脚力を見せ、驚くべき速さで国王の間に続く扉へ辿り着いた。
「おお、軍師ソウマ殿。どうされました? そんなに息を切らして……」
「はあっ、はあっ……門兵殿……お気になさらないで下さい。それに、今は軍師の職を退いた……ただのジジイです。それより、国王様へのお目通りを……はあっ、はあっ……」
「分かりました。では、こちらへ」
「行くぞ、トウマ、サクラ。国王様に失礼の無い様……どうした、お前達?」
ソウマの両脇から解放されたトウマとサクラは、鼻をヒクヒクさせながら全身の臭いを確認している。
「加齢臭がついたらどうしてくれるんだよ。ゾイだったら気絶してるレベルだぞ」
「そうだよ。うら若き乙女の体に、変な匂いを付けないで欲しいなあ」
……
……
こいつら、後で殴る。そう考えながら、ソウマは国王の間へと歩を進めた。
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