鬼憑き鬼狩り～鬼を狩る者～

鬼憑き

　女性の瞳は、紫色だった。しかもただの紫ではない。見ているうちに、濃く、淡く、また濃くとその紫色は移り変わっている。どういう仕組みなんだろうと思って見ていれば、女性は夏樹に話しかけてきた。

「こんにちは」

　ざあ、と風が吹いた。公園の木々が音を立てて揺れ、女性が着ている黄色いマキシ丈のワンピースが広がった。まだ五月だというのにそのワンピースには袖がなく、胸元はざっくりと開いている。夏のように涼しげな格好だ。歩み寄ってきたその女性が夏樹の目線に合わせてかがんだことで、豊満な胸の谷間が見えてしまう。夏樹は慌てて目をそらした。

「こ、こんにちはっ……」

　どうにかあいさつを返すと、女性は背になびく茶色い髪を軽く押さえながら笑った。

「どうしたの？　泥だらけだよ」

　二十歳くらいの見た目なのに、その笑顔は子供のように無邪気だった。知らない人と話してはいけないと、家や学校でいわれている。しかし、

「私暇なんだ。よかったら、お話しない？」

　濃く淡く色を変える紫の瞳を見ているうちに、夏樹は催眠術にでもかけられたような、ふわふわした気持ちになった。胸よりも魅力的な瞳に、文字通り目を奪われる。