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仕事は滞りなく終業を迎え、わたしは急いであの居酒屋へ向かった。
若干の不安を携えつつ。
特に返事はなかったから、来てくれるよね……?
店に入ると、前回と同じテーブル席に通され、前回と同じ椅子に座り、呼吸を整えた。
何とか一足先に着くことが出来たみたいだ。
……というか多分、わたしが先に着けるように時間を合わせてくれている気がする。
予想通り、彼はすぐに店に現れた。
「ご、ごめんねなんかいきなり……今日は大丈夫だった?」
「全然平気」
声を掛けると、黒澤くんが微笑して席に着く。
「榊に誘われるの2回目だな」
つぶやいて、瞼を伏せた。
仄かな照明に照らされ、長い睫毛に影が落ち、綺麗。
「そうだっけ……?」
言われれば今までほとんど、やや強引に黒澤くんに連れ出されていた。
今になって気恥ずかしさが込み上げて来る。
「嬉しい」
黒澤くんはにっこりと笑って、本心であろう言葉を率直に言ってのけた。
そんな素直な反応されたら、わたしの方が嬉し死にする。
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