同期の彼と思い掛けない夜

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「電柱からお客様の敷地まで多少離れていますので、他の方の敷地の上空通過の可能性があります。ルート確認のために、工事照会を依頼致します。お立会者様は、ご記載のあります鈴木様でよろしいでしょうか?」 営業部門からの依頼はシステム上でやり取りをする。 その画面を見ながら電話をかけ、肩に受話器を挟みながらメモを取り、同時に線路図面の打ち出しを行う。 この部署に配属されてから1週間が経過した。 設備登録の際、様々な理由で登録が出来ないことがある。 最も多いのが、電柱と敷地が離れている、または無電柱地域などで設備が不明というものだ。 そういった場合には、工事照会という実際に現地を確認する工程がある。 わたしたちのような机上での作業者ではなく、資格を持ったプロフェッショナルに、お客様立会のもと、現場を見て来て貰うのである。 と、これが1週間で学んだ大まかな内容だ。 無電柱地域の説明なども黒澤くんがしてくれたが、本当にさわりを聞いただけという感じで、まだまだ奥が深そうだ。 「榊は飲み込みが早そうだな」 「えっ褒められた?」 書類作成の様子を眺めていたのか、つぶやいた黒澤くんの言葉におどけて見せると、彼が続ける。 「いや本当、褒めてるよ。なかなか、言ってることが伝わらない人いるから、たまに」 それは言える。わたしも前の部署では後輩の指導もしたことがあるが、時折首を傾げたくなる子がいる。 完璧星人、黒澤くんにそんな印象を与えなかっただけでも、若干の優越感に浸れた。 仕事の出来る人から認められることが、自信に繋がるものだ。
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