4297人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あの……」
膝の上の手を握った。
その言葉を口にするのは、勇気が必要だったけれど、覚悟を決めてテーブルから黒澤くんの顔に視線を移した。
「……黒澤くんのお家の話を、聞いても良いかな……?」
黒澤くんは少し目を瞬かせた後、頬杖を付いて視線を外した。
「……だから、そういうの彼女みたいじゃん……」
その頬は、僅かに紅潮しているようで、そんな彼の姿にわたしの頬もみる間に紅潮してしまった。
……言わなきゃ、ちゃんと。
心臓の音がどんどん大きく速く鳴って、握った掌が汗ばむ。
「……かっ……彼女に、して下さい……」
だんだんと声が小さく掠れてしまった。
目を合わせることは出来ず、俯いて口にした言葉は、彼に届いただろうか。
恐る恐る顔を上げる。
黒澤くんは驚きを隠せないといった様子で、固まっていた。
「……えっ……」
口が半開きの黒澤くんなんて、初めて見た。
「……本当に?」
困惑したような、怒ったような表情で問い掛けた彼に、頷いて応える。
すると黒澤くんが片手で頭を抱え、大きく溜息を吐いた。
口元を手で隠し、視線は横の窓の外へ向けながら口にする。
最初のコメントを投稿しよう!