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そんなことを言ってくれるの……?
わたしは、黒澤くんの力になれるだろうか。
力に、なりたい。
緊張している胸元を押さえながら、息を吐き出す。
「聞くしか出来ないけど、いつでも言ってね」
伝えてしまっても良いものか、はばかられたけれど懸命に言葉を紡ぎ出し、笑顔を向けた。
黒澤くんは、優しい微笑みを返してくれた。
あっという間に2時間が経ち、退席の時間となってしまった。
店を出た扉の前で、黒澤くんが宙を見つめている。
「黒澤くん?」
「……俺、今日は帰りたくないな……」
黒澤くんがわたしの手を取り、切なげな表情で見つめて来た。
そんな顔されて、拒めるものか。
わたしだって、覚悟は決めて来たけれど、確認を入れた。
「黒澤くん、帰らなくても大丈夫なの?」
「まぁ、基本は父親が世話してるから、今日は平気」
「そっか……」
繋いだ手に、力を込める。
掌が汗ばみそうで、少し焦ったけれど、言葉を絞り出す。
「……行こっか……」
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